スペシャルインタビュー

官民連携で未来の豊かな生活を創造、100万本のばらのまち「福山市」

広島県の東端に位置する福山市は、市内中心部に新幹線も停車する「福山」駅を構える備後地方の玄関口。その「福山」駅は福山城の敷地内にあり、ホームから眼前に城を望むことが出来るというビュースポットでもある。また市内のいたるところにばらの花が咲く、癒しの街としても知られるところ。さらに世界最大級の製鉄所やデニム生地の生産など産業も盛んな福山市。今回は福山市役所の福山駅周辺再生推進部 福山駅周辺再生推進課を訪ねて、福山市の魅力と未来の展望についてお話を伺った。

企画担当次長 渡邊大樹さん(左)、整備担当次長 山田伸二さん(右)
企画担当次長 渡邊大樹さん(左)、整備担当次長 山田伸二さん(右)

ばら と ものづくりのまち福山市

——まずは福山市の概要について教えてください。

渡邊さん:福山市は広島県の東端にあり岡山県との県境に位置する人口約46万人の中核市です。地理的には観光で知られる「尾道と倉敷の間」と表現した方が伝わりやすいかもしれません。中国地方で4番目、広島県では2番目に大きな街です。

また戦後の復興として市民主導でばらを植えたことに始まり、現在では100万本のばらが咲く街としても知られています。2025(令和7)年には「世界バラ会議 福山大会」も開催されます。このバラ会議は原則として3年に1度、文字通り世界規模で開かれていますが、日本で開催されるのは2006年の大阪大会以来2度目のことです。

ばらは街中のいたるところで見られる
ばらは街中のいたるところで見られる

山田さん:産業では世界最大級と言われるJFEスチール株式会社の西日本製鉄所(福山地区)があり、またデニム生地の生産が盛んで、先のG7広島サミットの際には福山のデニムで作られたバッグを記念品としてお配りしました。ジーンズなどの完成品は岡山県も有名ですが、福山では生地の生産から縫製までを行っていて、福山のデニム生地は、国内はもとより名だたる海外の有名ブランドにも使用されています。

——失礼ながらデニムの街とは存じ上げていませんでした。

渡邊さん:本市は繊維業も盛んです。昔から備後絣の産地であり、その織や染の技術が今のデニム生産につながっています。工場見学を受け入れているデニムを扱う企業や、デニムスクールも開かれていたりして、デニム好きの方には知られる存在です。スクールに通った後にそのまま残ってデニム関連の事業を立ち上げられる方もおられます。あとは福山通運株式会社や、スーツ販売で知られる青山商事株式会社も福山に本社を置く企業です。そのほかにも数多くのオンリーワンやナンバーワンの企業があることが福山市の特徴と言ってよいかと思います。

備後圏域の玄関口「福山」駅

——次に「福山」駅について聞かせていただけますか?

山田さん:市の中心部にありながら新幹線のぞみも停車する便がありますので、「福山」駅は備後圏域の玄関口という位置づけにあります。東京へも1本で行くことが出来ますので、とても便利なアクセス環境が整っていると思います。また「福山城」の城郭の中に駅を通しているため、城の中に駅があるという全国的にも珍しい立地です。

福山城とばらのアーチは、観光客にも人気の「映えスポット」となっている
福山城とばらのアーチは、観光客にも人気の「映えスポット」となっている

この駅の北側を「文化ゾーン」と位置付けていて、「福山城」はもちろん、美術館や博物館、資料館などもある緑が豊かなエリアとなっています。ちなみに福山藩の初代藩主は徳川家康の従兄弟にあたる水野勝成という人物で、2022(令和4)年に築城400年を迎えました。年間を通じてイベントが開催され、記念事業として施設のリニューアルや各種整備が行われました。ばらと芝生の空間は市民憩いの場所として、またお城をバックにしたばらのアーチを用意して「映えスポット」とするなど観光の方にも人気を集めています。

着々と進む「福山駅周辺再生事業」

めざす「福山」駅前の姿をイメージしたイラスト
めざす「福山」駅前の姿をイメージしたイラスト

——「福山駅周辺再生事業」が進んでいると伺っています。その経緯や背景について教えて下さい。

渡邊さん:2018(平成30)年に約20年後を見据えた再生ビジョンが描かれました。ビジョンで描く駅周辺の姿に向かって官民連携で取り組んでいこうという事業です。先ほどご説明した福山城の改修や展示のリニューアルもその事業1つですが、駅周辺を4つのエリア(福山城周辺・伏見町周辺・三之丸町周辺・中央公園周辺)に分け、人が集まる拠点やエリア、それらをつなぐ主な道路を含む範囲を居心地が良く歩きたくなるエリア(ウォーカブルエリア)として、より良い環境にしていこうという取り組みです。

この輪郭を簡単に説明すると、「未来における豊かさを求めた事業」と表現してよいかと思います。従来の道路や箱物の建設という発想から、働き方も変わってくる時代の中で、物質的な部分よりも心に響くような、ゆとりや潤いのある環境作りを目指しています。

——より具体的にお伺いしてもよいでしょうか?

渡邊さん:以前であれば駅前に商業施設が求められましたが、近年の生活様式では郊外のショッピングセンターがその役割を担うようになりました。こうした時代に即した、さらには未来の時代を描いた時の理想の駅前はどういった形なのかを官民で話し合いながら計画を進めているのが福山駅周辺再生事業です。

福山駅周辺再生推進課 企画担当次長 渡邊大樹さん
福山駅周辺再生推進課 企画担当次長 渡邊大樹さん

かいつまんで説明をしますと、「リノベーションによるまちづくり」ではリノベーションスクールを行い、空き家物件を活用した新規の事業者誘致。「三之丸町地区優良建築物整備事業」では大規模商業施設を解体し新たに複合施設を整備して、未来を描いてこれまでにない交流の場を設けることでエリアの価値向上を目指します。「中央公園Park-PFI事業」では、図書館が隣接する中央公園に地元の民間事業者さんがガーデンレストランを出店。新たな魅力が生まれました。

市民団体によるマルシェ、図書館との連携イベントが開催されるようになるなど、賑わいの相乗効果が現れています。

「中央公園」の様子
「中央公園」の様子

ウォーカブルで潤いのある駅前作り

——駅前の整備が進行していることがよく伝わってきます。

山田さん:そして私が力を入れて伝えたいのは、「福山駅北口スクエア」です。自分が担当していることもありますが(笑)。この事業は北口の文化ゾーンに人を誘う空間を作ろうというものです。北口から出てすぐの空間を憩いの空間として整備することで、ご家族連れやお友達とのんびりすごされる姿を多くみかけるようになりました。

この北口での憩いのひとときやそこから感じられるゆとりといったものが、駅前の価値を高めていくと考えています。南口は交通結節の機能を担っていますが、「ほこみち(歩行者利便増進道路)」制度などを活用した、ウォーカカブルなまちづくりを目指しています。これは「道路空間の活用」の取組で、すでにウッドデッキが設けられるなどしています。

「福山」駅前の様子
「福山」駅前の様子

——未来の駅前像を描いて進めておられるのですね?

山田さん:その通りだと思います。街並みは時代を映しますし、これからの時代に求められる「豊かさ」や「生活の質」には余裕が必要になるでしょう。昭和の時代には「作り手目線」で造られた建造物なども、今の時代は「使い手目線」に変わっています。「エフピコRiMリノベーション再生事業」では福山市が所有する旧商業施設を、最少のコストとスピードを優先して1階部分のみリノベーションを加えて、半商業スペース、残りの多くが贅沢なフリースペースとして活用を始めました。コワーキングスペースもあります。

エフピコRiMリノベーション再生事業によって生まれ変わった「iti SETOUCHI(イチ セトウチ)」
エフピコRiMリノベーション再生事業によって生まれ変わった「iti SETOUCHI(イチ セトウチ)」

毎月第3日曜日には「ファーマーズマーケット」を、半年に1回は「リトル・ワンダー・デパートメント」と銘打った100以上の出店者さんを迎えた大規模なマーケットも開かれます。前回はデニムをテーマに行いましたが、その賑わいは相当なものでした。

福山駅周辺再生推進課 整備担当次長 山田伸二さん
福山駅周辺再生推進課 整備担当次長 山田伸二さん

——「使い手目線」での取り組みが奏功していると感じます。

渡邊さん:そう捉えていただけたら私たちも報われます。ここまで説明をした以外にも「福山駅周辺新モビリティサービス事業」という電動低速車による人の移動の実証実験も行いました。エリアの商店などとも連携し、ウォーカブルエリアにおいて、誰もが移動しやすく、かつお店や各施設などに出かけやすくする仕組みを実験しました。

現在、取組が進む「福山駅前広場再編事業」では芝生の広場を作る実験も行われ、大変好評でした。テントの下で子どもに読み聞かせがあったり、夜には弾き語りの人が訪れたりして、広場活用のニーズを感じることが出来ました。交通の利便性と人々が心豊かに安心して過ごせる空間の両立を目指しているという感じですね。

官と民が一体となって豊かな未来へ

——進化が止まない「福山」駅周辺を知った思いです。

山田さん:今はまだ途中ですので、一見すると不揃いに見える景色も少なくありません。しかし事業が完結した時には、この点と点がつながって線から面になります。そのためには、今後に建設されるマンションや商業施設なども、この構想に何かしら共感してデザインをしていただけると、より街全体にゆとりと潤いが生まれて、結果として駅前というエリアの価値が高くなると思います。

豊かな未来に向けて、様々な取り組みが続いている福山市
豊かな未来に向けて、様々な取り組みが続いている福山市

現状、福山市のまちづくりは官と民が一体となって、未来に向けて着実に動いています。お住まいや事業、何かしらご検討されている方で、もしご不明な点があればお問い合わせをいただければ関係部署やイベントを開かれている主催者さんを紹介するなどいたします。

自然も文化も揃う福山市へようこそ!

——本日は本当にありがとうございました。最後にお2人から福山市の魅力についてお聞かせ下さい。

渡邊さん:駅前の魅力に関する話はおよそお伝えできたのではないかと思いますが、それ以外にも、福山市には、昔からの港町の風情を感じられる町並みを残す鞆の浦もありますし、車で一時間も走ると、山や海という本格的な自然に触れることが出来ます。キャンプや海水浴や釣りといったレジャーを満喫できることは大きな魅力であると思います。

山田さん:私は自転車で通勤しているのですが、平地なので自転車でも気軽に回ることが出来るスポットが数多く点在しています。また、駅周辺には様々な散策エリアがあるので、休日に来られれば、「福山」駅で降りて歩いて観光を楽しんでいただきたいです。

渡邊さん:最後に一言伝えさせてください。福山市民が約46万人。その一人ひとりが「いいね」を発信してもらえたら、福山市の46万いいねを伝えることが出来ます。駅前の取組をきっかけに地域や市全体が豊かになるよう、市民の皆さんと一緒になって取り組んでいけたらと思います。

 
福山市役所
福山市役所

福山市役所 建設局 福山駅周辺再生推進部 福山駅周辺再生推進課

企画担当次長 渡邊大樹さん(左)
整備担当次長 山田伸二さん(右)
所在地 :福山市東桜町3番5号
電話番号:084-921-2111
URL:https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/
※この情報は2023(令和5)年6月時点のものです。