開放的な吹き抜けの校舎で学ぶ

子育て・教育機関と積極的に連携も行う「広島市立牛田小学校」

校舎外観
校舎外観

西に京橋川、北に牛田山、東に早稲田の住宅地、南は二葉山に囲まれた場所にあるのが「広島市立牛田小学校」。1874(明治7)年9月に開校とその歴史は古く、その後、牛田学校、牛田小学校、牛田簡易小学校、牛田尋常小学校、牛田国民学校と時代の変化に合わせて学校名が変わっていった。原子爆弾によって校舎が大破するという悲しい歴史を経て、1947(昭和22)年にふたたび「牛田小学校」と改称し、現在に至る。広島市内には約140ほどの小学校があるが、この「広島市立牛田小学校」は中でも極めて児童数が多く、現在1,200名以上の児童が通うマンモス校である(2019(令和元)年11月現在)。今回は、同校を取材させていただいたので、その様子を紹介していく。

校舎入口
校舎入口

「学校で学ぶ意味」を感じる授業づくり

教育熱心な地域として知られ、塾に通っている児童の割合が高いと言われる牛田エリア。実際、同校でも約4分の1の児童が中学受験を経て私学へ進むという。今やインターネットでも塾でも「学ぶ」ことができ、調べればいくらでも簡単に情報を手に入れることができる時代。しかし、同校の教員はそういった状況の中でも「学校で学ぶ意味」や「学級集団の中で学ぶ意味」を子どもたち自身が感じられる授業研究を続け、未来の創り手となる児童の育成に注力している。

ウッド調の教室
ウッド調の教室

同校には、広島市に2名だけという指導教諭が在籍している。依頼された学習研修会に、講師として指導及び助言を行っている。

光が美しく降り注ぐ印象的な校舎

校舎の中央に吹き抜けがある校舎は、広島市全体を見ても大変珍しい。それぞれの空間を大きく取り囲むような吹き抜け・建築構造となっており、5階までが教室、6階には教材園と呼ばれる畑とプールがあるユニークな造りとなっている。

吹き抜けから光が降り注ぐ
吹き抜けから光が降り注ぐ

広島市は少人数クラス制を採用しており、同校においても1クラス35人程度の編成で実施されているとのこと。小学1年生から6年生までそれぞれの学年で6~7クラスずつあり、児童数は1,200名を超える(2019(令和元)年現在)。保護者は転勤をされる方が多いため、年間を通じて児童の転入出も多い。

6階にある屋外プール
6階にある屋外プール

PTAを中心に、地域ぐるみで児童を見守る

広島市内の小学校では、「PTC活動」が行われている。「PTC」とは、「Parents(保護者) & Teachers(先生) & Children(児童)」の略で、基本的に保護者と児童、先生が一緒に活動を行うことをいう。学年ごとに趣向を凝らし、能力アップにつながる体力づくりを目的とした「親子で楽しむ知育体操」や、子どもの安全な環境づくりの一環として「地域安全マップづくり」を行うなど、様々な取り組みを実施。保護者も学校運営に携わる機会が設けられており、地域一体となって学校を支えているとも言えるだろう。

PTAは、登下校の見守り活動や地元のお祭りでのパトロールや声掛けなど、児童の安全を地域ぐるみで守る活動も実施。学校の花壇のお手入れを行う「花ボランティア」や絵本の読み聞かせや本の修理、貸し出しの準備などを行う「図書ボランティア」、学校の清掃や運動会の運営にも、全面的に協力している。これらの熱心なPTA活動は、学校と保護者が過去~現在にわたりより良い関係を築けていることの証と言えるだろう。

1階のエントランスは広々とした空間
1階のエントランスは広々とした空間

小学4年~6年生までの50名近い児童が参加する合唱部が2019(令和元)年度の「NHK全国学校音楽コンクール広島大会」において銀賞を受賞するという輝かしい成果を残している。

子どもたちが新しい環境に馴染むために幼保小連携・小中連携

広島市では、幼保小連携・小中連携もすべての学校で実施。研修会の実施に加え、児童についての情報共有もきめ細やかに行われている。特に、特別支援学級の児童については、卒業後、スムーズに中学校生活を開始できるように、小学校と中学校の教員同士が話をする機会を多く設けている。中学校の特別支援教育コーディネーターが予め授業の様子を見学に来ることも多いのだそう。小学校入学時に起こる「小1プロブレム」や中学校入学時に起こる「中1ギャップ」という言葉があるように、子どもたちにとって生活環境の変化は大人が考える以上に大きなもの。小学6年生が中学入学前に中学校の授業や部活動を体験したり、見学したりする「中学校体験」も行い、いかに上手く環境を接続していくかを意識し、小中連携が取り組まれている。

児童が率先して取り組む「平和集会」

同校では、小学校の周りに残っている戦災の遺跡を巡るフィールドワークなど、独自の平和学習にも取り組んでいる。子どもたちの平和への意識も高く、平和への願いを紙に書いたり、一人一羽鶴を折って学年ごとにまとめたり、平和学習について学年で工夫して発表したりする「平和集会」は、児童会が中心となって運営。原爆が落とされたときに多くの人が避難したといわれる「ピカドン竹やぶ」など、身近にあるものを自分の目で見て、感じて学ぶことで、児童にとってもより大きな学びのある出来事となる。

広島市内の小学校で活用される「へいわノート」
広島市内の小学校で活用される「へいわノート」

小学6年生は、毎年「こどもピースサミット」へ平和についての作文を応募。市内から選出された20名の児童が、「平和の歌声・意見発表会」を行い、大賞に選ばれた2名が毎年8月6日に「平和記念公園」で開催される平和記念式典で「平和への誓い」を読み上げているのだという。

今後も継続して取り組んでいく教育課題

最後に、今回校内を案内して下さった宅見政子校長先生にも少しお話をお聞きしたところ、「学校に来ることが楽しいと思えること。人と関わりを持ち、生きていく力を養うこと。コミュニケーション能力を身に付けること。これらの3つについては、今後も継続して取り組んでいきたいです。いくらパソコンを使って仕事をするようになっても、AIが進化しても、人と関わらずに生きていくことはできないからです。」とお話してくださった。

牛田小学校の校訓
牛田小学校の校訓

体育館前にある校訓の碑には、「至誠力行」という文字が刻まれている。「至誠力行」とは、「人のために誠をつくして全力で取り組もう」という意味。同校では、学力を身に付けていくだけではなく、活用する力を育てていくことに、これからも全力で取り組んでいくという思いの表れだろう。

子育て・教育機関と積極的に連携も行う「広島市立牛田小学校」
所在地:広島県広島市東区牛田旭1-14-45 
電話番号:082-228-2592
http://cms.edu.city.hiroshima.jp/weblog/..

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